エンジニア育成で伸ばすべきスキルは?成功のポイント3つも解説

近年エンジニア需要の増大により、経験豊富なエンジニアを採用することは難しくなっています。そのため、社内で自社にマッチしたエンジニアを育成することが重要視されています。
エンジニア育成で重要なのは、伸ばすべきスキルを明確にし、適切な教育方法を選択すること。この記事では、現場で活躍できるエンジニアを育てたいと考えている教育担当者に向けて、エンジニア育成が重要な3つの理由や、伸ばすべきスキル、育成を成功させるためのポイントについて紹介します。エンジニア育成の流れについても解説するので、記事を参考に実践してみてください。

エンジニア育成が重要な3つの理由

エンジニア育成が重要な理由は、以下の3つです。
- 経験豊富なエンジニアの採用が困難なため
- 理念や行動規範を共有し業務効率が図れるため
- 指導者自身の成長につながるため
エンジニアを育成することで、より自社に適した人材を育てられます。また、指導をする人材にもさまざまな能力が必要となるため、指導者の成長にもつながることも。ここからは、それぞれの理由を具体的にみていきましょう。
1. 経験豊富なエンジニアの採用が困難なため
近年のDXの加速化に伴い、業務効率化のためにさまざまなシステムやツールを導入する企業が増えており、多くの企業がエンジニアを求めています。労働市場では、経験豊富なエンジニアの争奪戦が繰り広げられ、エンジニア採用が難関になっています。
厚生労働省の調査によると、令和4年10月のエンジニアの有効求人倍率は1.52%となっており、需要が供給を上回っている現状に。
出典:厚生労働省 一般職業紹介状況(職業安定業務統計) 令和4年10月 職種別有効求人倍率
とくにエンジニアとして優秀な人材は、会社から手厚いサポートや良い労働環境を与えられているため、労働市場に出てくることも非常に少なくなっています。
このような背景から、経験豊富なエンジニアを採用市場で探すのではなく、社内で育成することが重要視されているんです。
2. 理念や行動規範を共有し業務効率化が図れるため
エンジニアを社内で育成すれば、業務効率化が図れます。なぜなら、育成過程で自社の理念や行動規範に沿った業務内容やスキルを共有できるからです。
理念や行動規範、目的や価値観など、自社のカルチャーを統一できると、従業員同士での意思疎通が容易になったり、より自社にマッチした価値を生み出したりと業務効率の工場が期待できるんです。
労働市場から経験豊富なエンジニアを採用した場合、前職のカルチャーが染み付いてしまい、自社の理念や行動規範が浸透するまで時間がかかるケースがあります。また前職とのギャップでミスマッチを感じるエンジニアもいるでしょう。
自社でエンジニアを育成する場合、スキルレベルだけではなく自社のカルチャーに沿った教育ができるため、より納得感を抱いてもらうことにつながるメリットがあります。
3. 指導者自身の成長につながるため
エンジニア育成によって、エンジニア指導者の成長も見込まれます。エンジニア指導には、スキル以外にもコミュニケーションスキルやマネジメントスキルなど、さまざまな能力が必要です。そのため、指導者にとっても刺激的な経験となり、指導のスキルが強化などの強みが身につくことも。
とくにマネジメントスキルは、エンジニアにとって重要なスキルです。現場で手を動かすだけでなく、プロジェクトの進捗管理やメンバーの活動を管理することにつながるため、今後のキャリアアップなども期待できます。今後マネジメント業務を任せたいと思っている人材を指導者に任命することで、よりマネジメント業務に携わるイメージがわきやすくなるでしょう。
エンジニア育成で伸ばすべきスキル

エンジニア育成をする際、どんなスキルを伸ばしてほしいのかを明確にする必要があります。例えば、実際に開発の際に扱うプログラミング言語のスキルや、設計をおこなう際に必要な論理的思考力などです。他にも、周囲と円滑に意思疎通するためのコミュニケーションスキルなども重要ですよね。
ここでは、エンジニア育成で伸ばすべきスキルについて詳しく解説していきます。
業務で必要なプログラミング言語のスキル
システム開発にはプログラミングが必要不可欠であり、プログラミングを行うにはプログラミング言語を扱える必要があります。そのため、エンジニア育成で最も重視すべきはプログラミング言語のスキル獲得だといえるでしょう。
ひとことでプログラミング言語といっても、さまざまな言語が存在します。自社内でエンジニアとして活躍してもらうために必須の言語は何か、習得しておいたほうが役にたつ言語は何かを明確にして、エンジニア育成を進めることが重要です。
スキルを伸ばすには言語に関する知識を学んだあと、実務を通したトレーニングであるOJT研修を取り入れることもおすすめ。実際にプログラミングに触れてもらいながら、少しずつ裁量権を増やしていき、自己解決力を高めていくとより効率的にスキルを伸ばせます。
関与者との円滑なコミュニケーションスキル
開発には顧客との打ち合わせやチームメンバーとの話し合いが多く発生するため、関与者との円滑なコミュニケーションスキルを構築することも重要です。
顧客の望むシステム開発をするためにも、顧客との打ち合わせの際には、会話から相手の要望をくみ取る必要があります。交渉や相談をする際にもコミュニケーションスキルは必須です。
また、チームメンバーとの話し合いの際もコミュニケーションスキルがなければ、うまく意思疎通ができません。意思疎通ができないと、大きなトラブルにつながったり、業務効率が低下する可能性があります。
コミュニケーションスキルを伸ばすには、常に人と関わり話をする練習が必要です。社内で勉強会を開いたり、面談の時間を設けたりと、会話をする時間を積極的につくりましょう。
問題発見と解決に導く論理的思考力
プログラミングの仕様や設計を決める際には、論理的な思考力が必要です。論理的思考力は、問題の発見と解決をする上で重要なスキルです。エンジニアの業務は問題発見と解決の繰り返し。ただ言語を扱うだけではエンジニアとしてスキルを発揮することは難しいと言えるでしょう。
そのため、育成過程で論理的思考力を培う必要があります。論理的思考力を伸ばすには、物事を具体的に深堀りして考えることが大切。まずは、問題について自発的に考えてもらうような質問や課題を用意することから始めてみてください。
エンジニア育成の流れ

エンジニア育成は、以下の流れでおこないます。
- 各エンジニアのスキルレベルを明確化
- 各エンジニアの不足スキルに適した教育手段を選択
- OJT研修を実施
エンジニア育成は全員に対して同じ教育をするのではなく、個々人に合わせた教育をする必要があります。ここからは、育成の流れを詳しく見ていきましょう。
1. 各エンジニアのスキルレベルを明確化
スキルマップを活用し、育成するエンジニアのスキルレベルを明確化します。スキルマップとはエンジニアのスキルを可視化した一覧表。本人や周囲がなんとなく認識している強み・弱みを一覧表に書き出して明確にし、分析することで、人材にあった育成カリキュラムを組むことができます。
スキルマップでは一般的に、縦軸に扱えるプログラミング言語やソフトの名称、横軸にエンジニア社員の氏名を書きます。ひと目で各人の能力や達成度がわかり、成長が順調か確認できるよう整えておくことが重要です。
2. 各エンジニアの不足スキルに適した教育手段を選択
スキルレベルを把握したら、それぞれの社員にあった教育手段を選択します。社員の性格や個性にあった教育の方法を実践することが重要です。
例えば、実践しながらの方が覚えられるタイプの人は初期からOJT研修を、先に座学でしっかり学んで不安を解消したいタイプの人は外部の動画研修から始めるのが向いています。個人に合わせた育成カリキュラムを作成すると、効率的なスキルアップを期待できます。
カリキュラムは、育成対象者の実現したいキャリアにあわせて作成することが大切です。将来的にキャリアにつながるカリキュラムであれば、育成対象者のモチベーションを保ちやすい利点も。このように全員に同じ教育をするのではなく、社員の個性に合わせた教育手段を選択しましょう。
3. OJT研修を実施
OJT研修とは、実際に現場で仕事をしながら先輩社員に指導を受ける研修方法です。
現場でスキルを覚えていくため、成長が早い点がメリット。実際に仕事を行うため、課題をみつけて解決するサイクルを比較的早くまわせます。
一方、現場でいきなり仕事を行うため新入社員にかかる負担が大きく、離職に繋がる可能性があります。スキルの習得までの時間には個人差があるため、教え方がきつくならないように注意が必要です。アドバイスする際は他の新入社員と比較するのではなく、個人のスキルに着目したフィードバックを行う必要があります。
エンジニア育成を成功させる3つのポイント

エンジニア育成を成功させるには、以下3つのポイントが重要です。
- Off-JT研修や勉強会など学習機会を設ける
- 長期目線で育成する
- 報連相しやすい環境をつくる
エンジニア育成の際には、育成対象者がストレスを感じない環境をつくる必要があります。学習機会を設けて知識の不足を補ったり、長期目線で育成したりと、育成対象者の目線にたった工夫を行うことが重要です。それぞれのポイントを具体的にみていきましょう。
1. Off-JT研修や勉強会など学習機会を設ける
Off-JT研修や勉強会などの学習機会を設けましょう。
Off-JT研修とは、実務ではなく研修やセミナーで学ぶ座学研修のことです。基礎からスキルを学べるため、実践に向けてある程度の知識をつけたい場合に最適です。新入社員に対して一律で実施できるため、教育担当が不要になります。
Off-JT研修や勉強会などで基礎スキルの習得機会を設けつつ進めることが重要です。ただし、座学でいくら勉強をしても現場でスキルを活かせなければ意味がありません。OJT研修と組み合わせながら、バランスよく育成カリキュラムを組むよう意識しましょう。
2. 長期目線で育成する
エンジニア育成は、長期目線で進めることが重要です。短期目線で進めると、社員にプレッシャーがかかり、心理的負担が増大する可能性があります。本人のモチベーションも下がり、非効率になることも。
また、エンジニアスキルは一朝一夕で身につくものではないため、いきなり多くの情報を与えても、育成対象者の理解が追いつかないケースもあります。エンジニア育成を計画する際は、焦らず、社員の成長度合いに合わせて柔軟に調整しましょう。
3. 報連相しやすい環境をつくる
育成対象者が報連相(報告・連絡・相談)をしやすい環境をつくる必要があります。現状報告により成長の度合いを確認し、育成計画の見直しに活かせるからです。
報連相をしにくい環境だと、育成対象者が悩みを抱え込み、効率的な成長が促せないケースがあります。また、報連相をしにくい環境は、育成対象者にとって心理的負担となり、早期離職につながる場合も。
育成対象者は、慣れない業務や職場環境に対してストレスや悩みを感じている可能性が高いです。ストレスをためずに育成過程をクリアできるよう、報連相をしやすい環境を整えましょう。
エンジニア育成に活用できるIT補助金

エンジニア育成に活用できるIT補助金として、厚生労働省の人材開発支援助成金があります。人材開発支援助成金は、従業員に業務で必要な専門知識やスキルを習得させるための訓練にかかる経費や賃金を、一部給付する助成金です。
エンジニア育成には時間と費用がかかるため、育成期間中の負担を減らすために、国の制度である助成金を活用しましょう。ここからは、エンジニア育成に活用できる4つのコースを紹介します。
特定訓練コース
特定訓練コースでは、雇用する正社員に対して特定の訓練を受けさせた場合、助成金を受給できます。対象の訓練には、OJTとOff-JTどちらも含まれます。
具体的には、以下のような訓練です。
- 厚生労働大臣の認定を受けたOJT付き訓練
- 若年者への訓練
- 労働生産性向上のための訓練
- 熟練技能育成、承継訓練
これらの訓練を実施した場合、訓練にかかった経費や訓練期間中に従業員に支払った賃金の一部を助成金として受け取れます。
一般訓練コース
一般訓練コースは、特定訓練コース以外の訓練を受ける場合に適用されます。雇用する正社員に対して、職務に関連した専門知識や技能を習得させるために訓練を実施すると補助金が受給できます。
支給を受けるには、訓練時間数が20時間以上であることや訓練がOff-JTであることなどが必要です。具体的な条件は、こちらの支給要項をご確認ください。
教育訓練休暇等付与コース
教育訓練休暇等付与コースは、従業員が教育訓練を受けるための有給教育訓練休暇制度などを導入し、従業員が訓練を受けた場合に給付を受けられます。
この制度は、従業員自身が自発的にキャリアアップを目指せるように導入する制度であるため、業務命令で教育訓練を受講させた場合、給付は受けられません。
支給要件には、有給教育訓練休暇は非正規社員を含むすべての労働者に付与することや、計画期間の初日から1年ごとの期間内に1人以上の被保険者に休暇を付与することなどがあります。
特別育成訓練コース
特別育成訓練コースは、有期契約労働者などの人材育成に取り組んだ場合に助成金を受け取れます。例えば、パートやアルバイトなどの有期契約労働者に対して、正規雇用労働者にするなど雇用条件を変更するために職業訓練を実施すると受け取れます。
訓練はOJTとOff-JT、どちらも対象です。OJTの場合は賃金助成のみ、Off-JTの場合は経費助成と賃金助成が受けられます。
エンジニア育成は個々人のスキルに適した方法で
エンジニア育成では、業務で使うプログラミングやコミュニケーションのスキル、論理的思考力を伸ばす必要があります。
育成する際には、育成する社員と育成される社員のどちらにも負担がかかりすぎないように、長期的な目線でおこなうことが重要です。また、個々人のスキルを確認し、それぞれに適した方法で教育をする必要があります。
このようにエンジニア育成には、時間と手間がかかります。育成の間に人材が確保できずエンジニア採用に悩んでいる方は、エンジニア採用代行「TECH HIRE」にて無料相談を受け付けているため、ぜひ一度ご相談ください。
